「宮木!」
 とある中学校。2年1組の教室に入るなり怒鳴り声をあげたのは、同じく2年生の佐久間隼人。まだ幼さを残した、小柄な少年だ。
 その隼人に名指しされたのは、1組の生徒である宮木美香子。他の女子生徒より頭ひとつ分以上身長が高く、ざわめく教室の中で椅子に座っていても、一目で彼女の位置が分かってしまうほどだ。
「またぁ?もう、毎日毎日しつっこいわねえ」
「このままやられっぱなしじゃ、俺の気が済まないんだよ!」
「あんたの気持ちなんて私には関係ないでしょ。それに、何度やっても結果は同じだよ」
「うるさい!」
 美香子はうんざりしたような表情を浮かべながら席を立ち、顔を真っ赤にして叫ぶ隼人の前に立つ。
「それで、今日は何で勝負するの?」
 隼人を見下ろしながら美香子が尋ねると、少年は唇をぐっと噛み締めた後、答える。
「腕相撲だ!」

 女子高に勤める教師・若松は、一瞬、自分が間違えて女子更衣室の扉を開けてしまったと思い込んだ。
「先生、どうしたのー?」
 最前列の席に座る少女が、入口で呆然としている若松に声をかける。
 そこは確かに、彼がこれから授業を行う、2年3組の教室だった。
 だが、生徒である少女たちはほとんどが下着姿で、中にはブラジャーすら付けていない者もいる。
「ど…どうしたんだ、一体…?」
 若松の問いに、少女たちはあっけらかんと答える。
「だって暑いんだもん」
「私たちは気にしませんから、このまま授業をさせてください、先生」
 …こうして、数学の授業が始まった。

「ちょっと! 何触ってんのよ!」
 中学2年生の坂本良太は、いつものバス通学の途中、女子中高生たちで通路までぎっしり詰まったバスの中で不用意に動いたために、痴漢の疑いをかけられてしまう。
「え…ぼ、僕は何も…」
「あたしのお尻触ったじゃん!」
 そう言って良太に詰め寄るのは、彼より背丈のずっと大きい女子高生。
 しかも気付くと彼は、数人の女子高生たちに取り囲まれていた。
「何? 美里、痴漢?」
「こいつがあたしのお尻触ったのよ」
「ち、違います…」
「へー、可愛い顔していい度胸してんじゃん」
「朝から大胆ねー」
 そして良太は、途中の駅で強引に降ろされてしまった。
「あ、あの…僕、学校が…」
「あんた、痴漢しといてのうのうと学校行くつもり?」
 もう弁解しても無駄だと、良太は悟った。