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 2時間後。この1ヶ月の、僕と父との交わりを編集したビデオが終了した。
「…は…はぁぁ…ぁぁん…」
 僕はもう、まともな思考のできる状態ではなくなっていた。
 後ろの父に、欲情しきった身体を完全に預けて、ただただ喘いでいる。
 父は、そんな僕の肩を優しく撫でてきた。
「ひゃあ…あはぁ…」
 それだけの刺激で僕は身体を震わせた。
 もう全身どこを触られても感じてしまいそうだった。

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「あぁ…はぅ…ん…」
 自室の机には、大学受験のための参考書が広げられている。
 でも僕はそれどころじゃなかった。
 椅子に座る僕の身体を、父が撫で回しているのだ。
「この前の面接だと、合格は間違い無いそうだな」
 父は、僕の胸をまさぐったり、太腿を撫でさすったり…全裸の僕の身体を弄びながら、ごく普通の会話を向けてくる。
「それでも気を抜くなよ。今が大事な時期なんだからな」
「は…はぁ…ぁん…」
 僕は右手に握ったシャーペンを強く握りしめ、何とか参考書に意識を集中しようとするが、無駄だった。
 参考書の文字も、父の言葉もかすんでしまい、ただ父の手の感触だけが頭の中を支配していた。

「守…」
 寝室に向かおうとしていた僕を呼びとめたのは、風間健三・僕の父だった。
「おやすみ」
 でも僕は、父とは視線を合わせず、そっけなくそう言って、部屋に入ろうとする。
「守」
 すると父は駆け寄ってきて、僕の腕を乱暴に掴み、引っ張ってくる。
 僕は父に抱き寄せられてしまった。
「や、やめてよ父さん」
「まだ寝るような時間じゃないだろう…なあ、守」
 父はそうささやいて、僕にキスをしてきた。
「んっ…!」
 僕は必死に抵抗しようとするが、父は僕の身体を両腕で抱きしめて、力を緩めようとしない。
 そして…父の熱い舌が、僕の口の中に侵入してくる…
「父さん!」
 僕はありったけの力を込めて、父を突き飛ばすようにして、その抱擁から逃れた。
「…守?」
 父は不思議そうな顔つきで、僕を見つめている。
「どうしたんだ?」
 僕は爆発しそうな激情を抑えながら、言った。
「もう…やめようよ、こんなの…!」
 …半年前、僕の母は亡くなった。
 それからだ。父が、僕を求めるようになったのは…
「いい加減にしてよ…いくら母さんが死んで悲しいからって、僕に…こんなこと…!」
「それは違う」
 父は語調を強めて、僕の言葉を否定した。
「確かにお前は母さんによく似ているが、そんな事は関係無い。
 私は母さんの代わりにお前を抱いたんじゃない…守、お前自身を愛しているから…」
「だからって、こんなこと…!」