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 和幸が三度目の銭湯に行ったのは、小沢に射精させられた日から三日後だった。
 仮病を使ったりしながら、二日風呂に入らなかった和幸だが、母親に注意されて、それ以上言い訳もできず、もちろん本当の事も言えず、夕方、和幸はタオルを持って外に出る。
「……」
 和幸がくぐった銭湯は、前回と同じ、近所のスーパー銭湯だ。
 他の銭湯に行くという考えも、無いことはなかった。
 しかし和幸は、自分でも分からない気持ちによって、引き寄せられるように、この場所に足を向けてしまったのだ。
(またあの人に会うって分かってるのに…
 僕…何やってんだろう…
 それとも、またあんなこと、されたいの…?
 そんな…!)
 自分の思考に首を振って、和幸は更衣室へと向かった。

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 翌日。
「よう」
 更衣室で声をかけられ、和幸は声も出なかった。
 昨日近付いてきた中年男性だ。
 これから浴場に向かうところなのか、全裸で、剥けた逞しいペニスを隠そうともせず立っている。
「また包茎チンポを見られに来たのか?」

夕暮れの下、高校生の田中和幸は、溜め息を吐きながら歩いていた。
 彼は今、銭湯に向かっている。
 行きたくて行っているわけではない。
 彼の家の風呂釜が故障して、1週間ほど銭湯通いをしなければならなくなったのだ。
 和幸にとって、「見知らぬ人達の前で裸になる」という行為は、たまらなく恥ずかしく、耐えがたい行為であった。
 それでも、1週間も風呂に入らないわけにはいかない。
 嫌々ながら、和幸は、家からほど近い銭湯に向かって足を進めた。